【12】企業分析事例

和民の再建戦略を考える③

前回は和民の国内外食事業について、客数と客単価が相関関係にある
ことについて問題提起いたしました。

客単価が上昇すると客数が減少するというトレードオフの関係にあるという
ものでした。

ユニクロは逆に客数、客単価ともに増加する望ましい施策を展開していました。



経営陣はこの辺りをどのように考えているのでしょうか?
「ワタミ株式会社2014年度決算説明会」資料
によると

国内外食事業の2015年度計画は

 ・売上高480億円(前期比△123億円)
 ・営業利益5億円(前期比+42億円)
 ・期末店舗数475店(前期比△80店)
 ・既存店売上高前年比95.5%(前期比2.1%)

としています。

グループ全体の経常損益体質からの脱却を目指して
まずは規模を縮小し、利益追求体制へ転換すると言う
メッセージが強く読み取れます。


そして今後の方向性として

①お客様にとって“居心地の良い”店づくり
②3年後に、居酒屋業界平均レベルとなる営業利益率3%

を掲げています。

そのために


3つの施策を展開していくとのことです。

そして



という方針を固めています。

これらの計画を見て、若干の不安を覚えました。

営業利益率が先行しており、売上高目標が来期記載されていない。
また再来期売上目標が ~530億円 としている。

530億円以下を目標にするというのは、どう解釈したら良いのでしょうか?

利益確保、とにかく業界平均の3%死守というメッセージしか見えません。

「居食屋」という新しいカテゴリーを創出したことに和民のブランド価値が
あるのではないでしょうか?

その企業が業界平均営業利益率を目指す というのは
顧客の立場で考えていない証拠ではないかと思います。

顧客は居酒屋だろうが、パブだろうが、ファミレスだろうが、
「業界」という認識などなく、利用しています。

顧客の立場にたったコンセプトの再構築が先決であると考えます。
その意味で
「居食屋」というコンセプトを深めていきつつ進化させていく事が
良いのではないかと思います。

ここで先週の客数×客単価という枠組みで、和民の周辺業態を整理する
ことで今後の方向性を考えてみたいと思います。


【客数を増加させる】

コストパフォーマンスの高い目玉商品によって増客し、回転率を上げる
工夫をすることによって薄利多売を目指す
「俺の株式会社」俺のフレンチなどのシリーズ


最近では株式会社ペッパーフードサービスの運営する「いきなりステーキ」
も同様のビジネスモデルと言えます。



【客単価を増加させる】
高品質の商品によって高い顧客価値を提供するビジネスモデルで、
APカンパニーが運営する塚田農場や四十八漁場が挙げられます。


食肉や鮮魚などの生産者との直接契約によって安く新鮮な食材を
提供する「生販直結」ビジネスモデルで高収益を維持しています。

接客にエンタテインメント性を取り入れた「楽しさ」によって、
来店頻度を高める工夫もなされています。

客単価が高いといっても3割も4割も高い訳ではなく、「楽しいから
多少高くても塚田農場へ行こう」という感覚です。


これらの店との競合優位性を確立するには、現状の路線では
とても厳しいと感じます。

斬新だったコンセプトやビジネスモデルも20年以上経ってしまうと
陳腐化していることを感じます。

ではどのようなコンセプトが現在の環境に合致するのか考えてみました。


「居食屋」というコンセプトには、これまでのサラリーマンやおじさんの
ための居酒屋をファミリーでも楽しめるようにターゲットを拡張したこと
が特徴として挙げられます。

その基本は外さずに、他社との違いを尖らせることが必要であると考えます。

例えば和食特化。讃岐うどん専門店やカツ丼などの専門性を追求する
APカンパニーやいきなりステーキのように食材を訴求する
俺の・・・のように料理人を訴求する

ヒト×食材×専門性 の軸で発想していくと

健康志向やアクティブシニアが注目されているので自然食品、少量多品種が
楽しめる店というのもアイデアとして考えられます。

逆張りで、ものすごい量とカロリーなども一定の需要を獲得できると
思います。大皿で取り分けて楽しむというのもいいかもしれません。

大戸屋のような家庭料理だけど、なかなか自宅では味わえない食材や
料理を出すというのも差別化ポイントとして大きいと思います。

調理する人が主婦で、食材にこだわり、調理方法が斬新 
商品レベルで特徴的なものを出し、
店舗サービスに工夫を凝らすことが必要と考えます。

今後の和民の業態転換を注視していきたいと思います。

執筆者:蛭川 速 / 2015.06.12