【12】企業分析事例

和民の再建戦略を考える②

前回は和民の今後の方向性として、客単価を下げて、客数を伸ばすという

方向性を示している事をお伝えしました。


今回は再度客数と客単価の関係について整理として、どうあるべきか

を考えていきたい思います。

和民のIRが掲載されているHPから客数、客単価、売上高の対前年比の

データが掲載されている箇所を引用し、再度グラフを作成してみました。




このグラフから何を感じるか、ということです。

実は前回は和民の2014年度決算説明資料から引用したのですが

コメントとしてあったのが

「客数と客単価には明らかに相関関係がある」です。

そして

「リブランディングをはじめ客単価の向上に努めたが、
結果としてお客さまの支持は得られず」とあります。

すべては現状認識にあります。

私は前回、客数と客単価というよりも客数と売上高に着目しました。

グラフから客数と売上の相関が明らかに見えるからです。

念のためデータを入力し、客数と売上高の相関関係を計算してみました。


散布図に描くと一目瞭然です。客数が増加すれば売上が上がる。

相関係数は0.86と非常に高い数値です。

ちなみに客単価と売上の関係はどうでしょうか?


客単価が売上増加に影響を与えていないことが分かります。

客単価を操作したところで売上を上げる事ができないという

ジレンマに陥っています。

即ち客単価増加という現象面に着目していますが、

客単価上昇分の付加価値をお客様に訴求することができなかった

価値が受け入れられなかったということです。

決算説明通りに客単価と客数の関係には明確な相関関係が見られます。


客単価を上げれば、客数が低下しています。

きれいな逆相関となっています。

ご指摘通り ということになります。

問題なのは、この現象をどう捉えるかということです。

相関関係があることが良いのでしょうか?


客数と客単価の関係をマトリクスで考えると以下のようになります。




客数と客単価が相関関係にあるということは

左上の象限「安売り」  か 右下の象限「客離れ」

の時に表れます。


どちらも経営的に望ましい状況ではありません。

客数と客単価がトレードオフの関係にならないように、

「質」をしっかりと考えなくてはなりません。

質とは顧客に提供する価値を意味します。

右上の象限「◎」はどのような状態でしょうか?

客数、客単価ともに伸びていますので、

顧客が客単価増加を認めているという状態です。


国内ユニクロがこの状態にあります。

和民同様のグラフを作成してみました。


和民と同じく、客数と売上高の関係には相関関係がありそうです。


和民程ではないですが、強い相関関係が見られます。

では客単価はどうでしょうか?


客単価がきっちと売上に対して影響を与えています。

相関係数0.5ですから一般的に相関があるといって良いレベルです。


和民が無相関(相関係数が0に近い状態)なのと対照的です。


では客数と客単価の関係はどうなっているでしょうか?


無相関とまではいきませんが、ほとんど相関関係がみられません。

客単価を上げても客数に影響を与えていないという状況です。


私はユニクロの業績に着目をして、毎年アニュアルレポート

を読込み、戦略と業績のギャップがどこにあるのか

ウォッチしています。

2013年8月度の国内ユニクロは客数を伸ばすことに

執着したあまり客単価の下落を招いてしまいました。

そこからの気づきと戦略の方向転換が功を奏している

と言えるでしょう。


ですから和民の場合も今年3月にメニューを変更しましたが

そのことが顧客に対して付加価値を与えるのか否か

ということを考えなくてはなりません。

因みに先程の決算説明資料では「国内外食事業今後の方向性」

として以下を掲げています。




揚げ足を取るわけではないのですが

①は逆のことを言っているような気がします。客数を伸ばすには

客の滞在時間を短くすることが一番の得策です。あるチェーンでは

回転率を上げるためにわざと居心地の悪い椅子やテーブルを用意している

と言われています。居心地がよくなると回転率低下を招いてしまいます。

居心地が良い店 で良いのでしょうか?

もちろんコストパフォーマンスを上げると言う観点では必要なメッセージ

であると思われますが、説明が不足しているように感じます。

お客さまにとって“居心地が良い”店づくりは耳障りの良い言葉ですが

行動レベルで戦略性を伴わない危険性があります。


②も少し寂しい気がします。業界平均を目指そうということもそうですが

そもそも「居酒屋」からの差別化を図って「居食屋」というコンセプトが

和民の基本戦略ではなかったのか?そう考えるとかなりブレていると

感じます。



では今後はどのような方向性が望ましいか、次回は客数増加と客単価上昇を

どう実現したら良いかについて考察していきたいと思います。

執筆者:蛭川 速 / 2015.06.05