【12】企業分析事例

和民の再建戦略を考える

多くの上場企業の業績回復が鮮明となっています。

リーマンショック前の最高益だった2008年3月期を上回り、

2015年3月期の連結経常利益は前期より6%増えたとのことです。

円安を追い風にした海外需要を取り込んだことが要因のようです。

自動車や電機メーカーが大きく利益を伸ばしました。

ただ苦戦している業態や企業もあるようです。


居酒屋の「和民」は2015年3月期連結最終損益が126億円の赤字に

なったと発表しました。

外食や居酒屋全般に不調なのでしょうか?


(社)日本フードサービス協会のデータを抜き出すと

2014年業績比較で

【売上高(対前年比)】

全体:99.8%

ファストフード:97.9%

ファミリーレストラン:103.2%

居酒屋:93.7%


という状況です。

ファミリーレストランが比較的好調なのに対して居酒屋は苦戦を

強いられています。

景気が上向き基調にある中で、消費者のライフスタイルの変化

や若年世代の嗜好の変化など構造的な問題がありそうです。


居酒屋業界全体として厳しい状況ですが

「和民」は更に厳しいようです。





全体の傾向としてはほぼ同様ですが、ほとんど全ての期間で、

居酒屋業界平均を下回る状況となっています。


長期で和民の業績をグラフ化すると以下のようになります。(国内外食事業)



ここ数年で最も業績が良かったのはリーマン前の2008年度で、

売上高は930億円にのぼります。

その後リーマンショック、震災といった消費意欲の落ち込む環境変化から

なかなか立ち直ることができていないのが分かります。

2015年度売上高は前年比14ポイント減少、ピークの2008年度比で

35ポイントの減少となっています。

居酒屋という業界自体が現在の生活者のライフスタイルにマッチして

いない状況の中で、これまでの成功体験を活かすことが困難な状況

であることが分かります。

こうした状況の中で、過去店舗数の増減によって収益をコントロール

していく意図が見えます。



既存店の業績が低迷する中で、新規出店を増加させることによって

客数を増加させることによって収益改善を図ったと考えられます。

しかしながら実態としては、店舗数増加に比較して、1店あたり売上高は

減少傾向にあります。

単店の収益力が落ちている中で、スクラップ&ビルドが上手く機能

していないということです。

この状況は立地による収益機会の拡大を期待する事が困難である

ということに他なりません。

2015年度は過去最高の91店舗撤退し、経営効率を高めようとする

意図が見えます。

そして売上高を客数と客単価に分析し、その推移を比較しているのが

次のグラフです。



既存店の売上高は既存店の客数とほぼ同一軌道を描いています。

これは和民のビジネスとして客単価よりも客数の方が影響を

与えているということです。

売上拡大の重要な要素として客数があるということです。

今年3月にメニューを変更し、客単価を下げ、業績改善を試みるという

方針が打ち出されましたが、

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO83967300V00C15A3TI0000/



単なる低価格というだけで客数が増加するほど事態は生易しい状況

ではないと考えます。


では客数を増加させるにはどのような方向性が有効であるのか・・・


次回は競合企業の動向と合わせて、和民の戦略展開について

考察していきたいと思います。

執筆者:蛭川 速 / 2015.05.29