【8】BtoBマーケティング

顧客が欲しい商品を作っても売れない

1. 顧客が欲しい商品をつくっても売れない
現代はインターネットリサーチが全盛ですが、マーケティングリサーチで顧客の要望を収集し、そのまま商品を企画しても、残念ながらヒット商品は生まれません。本田宗一郎氏も著書の中で、「市場調査は、ある意味で有効だと思う。たとえば、既成の製品の評判を探ろうという場合である。だからといってそれを基礎に改良品を出して売れるかといえば、それは判らない。ましてや独創的な新製品をつくるヒントを得ようとしたら、市場調査の効力はゼロとなる」と記述しています。

(1) 顧客は様々なジャンルの商品を検討している
顧客が「欲しい商品」は様々な分野にあります。


私は現在マーケティングコンサルタントを行っておりますが、顧客へ訪問する際のビジネスバックを新調したいと考えています。デパートへ出かけるとバッグ売場をうろついています。
また40代半ばに差し掛かってきていますので、健康に留意しなくてはと、暇を見つけてウォーキングをしておりますが、自転車にも興味をもっており、「折りたたみ式の軽い変速機付自転車」も欲しいと思っています。暇があればインターネットで情報収集しています。
そして本コラムを書いている今、せわしなくメガネをかけたり外したりしています。そうです老眼に悩まされているのです。
ビジネスバッグ、折りたたみ自転車と欲しいモノはいくつかありますが、最も切実で緊急性が高く、購入する必要性が高いのは、残念ながら老眼鏡になりそうです。
しかし街中でもし折りたたみ自転車のアンケート協力の依頼を受けたら「是非買いたい」と回答することでしょう。生活者は大方このようなものではないでしょうか?
生活者の頭の中には、ひとつの商品カテゴリーだけでなく、いくつかのカテゴリーが並列している状況にあるのです。そういった事情を前提としてマーケティングリサーチの結果を読み取ることが必要です。

================================================================================
8cmの壁 積水ハウス 納得工房
顧客の発する「言葉」の位置づけを考える際に、積水ハウスの「住まいづくり体験型施設 納得工房」の逸話があります。「納得工房」は住宅購入を検討している人が、住宅のスペシャリストである研究者と直接話をしたり、部材の構造を見たりして、住宅に対する理解を深めるための施設です。以下「マーケティング優良企業の条件」情報多重展開-積水ハウスから抜粋します。


あるとき納得工房に来たものの「積水ハウスの住宅は購入しない」と言っている顧客がいた。
どうして購入していただけないのか尋ねると「積水ハウスの壁は薄い。8cmしかない。別のメーカーの壁は10cmだ」という。その顧客はそれでも1日、納得工房をまわり、住まいづくりに関して専門の研究者と会話する機会をもち、帰り際「積水ハウスの家を買うよ」と言った。
納得工房の中で8cmの壁の防音性を確認したことで最初の不安が消えたというのが態度変化の大きな要因と考えられる。
だが福井氏(積水ハウス専務 当時)は「必ずしもそうではない」と言う。
顧客が「積水ハウスの製品を買わない」という背景には、さまざまな要因が入り込んでいる。その要因は顧客自身にとって、もはや分解不可能な「しこり」のようなものになっている。
そのため一言で自分の判断の理由を説明するのは難しい。しこりは「何となくこだわりがあるが、それが何からどう構成されているかは説明できない」という状態に他ならない。
そういう顧客に対して購入しない理由を聞くと、一番答えやすい、ないしは相手が分かりやすい答えが返ってくる。それが「お宅の壁は薄い。8cmしかない」という回答だと福井氏は言う。
相手が「なるほど、そうか」と思ってあきらめてくれるような答え(自分自身にも納得がいくような答え)を出そうとする。本音に直結した答えというより、その場を繕う「合理化された答え」が現れると言ってよいだろう。
顧客本位の営業担当は上司に伝え、厚い壁を導入する。
直近の問題は解決するように見える。しかし顧客もメーカーもお互い気に入らない厚化粧の住まいづくりの芽が生まれてしまう。
厚い壁は、「合理化された言葉」であって、決して顧客の真実の言葉ではないからだ。納得工房が可能にしたのは、そうした「しこり」を取り除き、お互いが満足できる住まいづくりだったのである。

直接顧客から意見を求める事には限界があることを認識しておきましょう。
=================================================================================

(2) 顧客が置かれている状況を把握することで、選択基準をつかむ
セキスイハウスの納得工房にあったように、顧客自身も何が不満なのか?逆に何を重視しているのかを意識していないことが多いということです。
余程関与の高いもの(商品について詳しくなるくらい好きなもの)でない限り、顧客の頭の中は「ブラックボックス」であると考えるべきです。売るためには、「納得工房」のような施設によって、顧客との関係性を良好なモノにすることによって解消できます。
しかし企画を立てる際には、顧客の状況を踏まえて、その状況であれば、〇〇なことが必要になるのではないか。という思考プロセスが必要となります。
私の仕事においてパソコンは必須の道具で、これがなければ仕事にならないくらい依存しています。ところが起業後、パソコンを購入する際には、どんなパソコンを購入すべきか整理できていませんでした。私のコンサルティングスタイルはデータをお預かりして要因を分析し、解決施策を提言するというものが多く、机の上でじっくりと仕事をすることが多いと想定し、キーボードがしっかりとしていて、画面の大きなパソコンを購入しました。確かにデスクワーク中心ですので使い勝手は快適でしたが、意外と自社の事務所以外での作業が多いことがあり、そのパソコンを持ち歩くことになりました。
そこでようやくモバイルの軽さと打鍵しやすさという2つの事項の重要性に気付いたのでした。こういった使用してみないと分からない事を、メーカーが先回りして提案してくれたら、どんなに感謝したか分かりません。
ターゲットとした顧客が、どのような状況にあり、何を必要とするのか?それを掴むことが求められているということです。私の例のように、顧客は商品の選択基準について分かっていないことが多いと考えます。分かっていない顧客から話を聞いても有効な回答は得られません。顧客がどのような状況なのか、使用シーン・生活シーンを仮説として設定することで、そこでの困り事、不具合(ニーズ)を探索することができるのです。


**************************************************************************************

フォーカスマーケティングでは皆さんのビジネスに合致した形で仮説設定プロセスを伝授するコンサルティングサービスをご案内しています。マーケティング施策で悩まれている方、企画が煮詰まっている方は、

お問い合わせ

にて、ご連絡ください。コンサルティング内容を説明したパンフレットをお送りします。

(お問い合わせ内容 欄には「マーケティング仮説資料希望」とご記入ください)


仮説設定プロセスを習得ことで、情報収集、分析、仮説設定から施策展開について、経験豊富なコンサルタントのサポートを受けながら、ご自身の商品ブランドを強化するための施策立案が可能となります。

執筆者:蛭川 速 / 2013.08.03